’00,10,7〜9 『THE OCTOBER COUNTRY 』in 平ケ岳 

 ’75年頃、フレーズを見ただけで買ってきたLPがある。「十月は黄昏の国」東京キッドブラザースだ。小椋佳と加川良が主に曲を担当しているのだが、何と言っても坪田直子が良い!凄く良い!、あのけだるい声で「もう、愛されたいなんて思わない、なーんにもいらない…」な〜んて言われたらもう…。「黄昏の中で珈琲をのみながら…過ぎ行く青春を」ってのも、なんとなく今の「大人の社交場」に通ずるところも無きにしも非ず、結構、気に入って、十月になると引っぱり出している。
 しかし、「十月は黄昏の国」実は東京キッドのオリジナルでは無いと知ったのはつい数年前だ。「THE OCTOBER COUNTRY」レイ・ブラッドベリの短編集の名もやはり「10月はたそがれの国 」だった。読んでみると本家「10月はたそがれの国 」は東京キッドとはちょっと趣が違っていた。「過ぎ行く青春」と言うよりも幻想的で怪奇、その十月は万聖節の宵祭り(イブ)ハロウィンであり、住む者は秋の人々、秋のおもいを思い、夜ごと、しぐれに似たうつろの足音を立て…って感じだった。
 雰囲気的にはどちらかと言うと本家に近い不良夫婦だが、この「THE OCTOBER COUNTRY」は「過ぎ行く青春」でもハロウィンでも無く、それは、来たるべきシーズンの宵祭り、黄昏の珈琲を飲みながら、来たるべき時を待つ、そんな2泊3日に行って来ました in 平ケ岳です。

10月7日
 早朝5時半、平ケ岳登山口・鷹の巣目指し快調に飛ばすセプター号、2時間半にて登山口着。準備に30分要し、AM8時半、まずは下台倉山、そして台倉山、池の岳、平ケ岳下キャンプ指定地へと出発した。天気快晴、無風、紅葉まずまず、ザック重し。PM3時半、約7時間にてキャンプ指定地到着、テント設営後、黄昏の珈琲を「ネスカフェ」にて過ごし、夕食も早々にPM6時にはシュラフに入る。


下台倉山への急登

台倉山稜線

姫池の原より平ケ岳

アーベントロート

10月8日
 夜半、目覚めた時、見上げた星空は完全に冬の星座だった。オリオンや牡牛に混ざり、天の川までもはっきりと写し出していた。まだこの世にこんなに星があったとは驚きだった。しかし、それはまた、いかに空気が澄んでいるかを示している訳で、再び目覚めた早朝のキャンプサイトは一面霜の支配する世界であった。つまり、とても寒かった。
 モルゲンロートをやはり「ネスカフェ」で過ごした夫婦は「おしるこ」の朝食を済ませ、いよいよ平ケ岳本峰へと!(と言っても20分程の道程だ)。平ケ岳山頂はまさに平ケ岳…平らだ。木標が無ければ何処がてっぺんか解らない、池塘と草原の世界だ。展望は360度見渡せる。至仏、武尊、富士、奥秩父、南アルプス、八ヶ岳、北アルプス…見えそうな山は全部見えるようだった。しかし、悲しいかなほとんど山の名前を知らない不良夫婦、横で「あれは何々、これは何々」と仲間内で話しあってる山屋グループの声に聞き耳を立て「あー、そうなのか」と、うなずきあうだけであった。
 山頂登拝を終え、無事下山するが、やたら人が多い「あれ?こんなにキャンパーいたっけ?」見るとたまご石方面から、お遍路さん宜しく、鈴(熊避け)ぶら下げた集団が湧いてくる。通称「皇太子林道」を利用した登山者だ(注:皇太子がこの山登る為に作った林道)。それを使うと2時間掛らないで山頂を踏める。通常はゲートにカギが掛っており一般車両は入れない。地主と民宿(地主=民宿)に泊まった人のみ立ち入りが許される、まさに皇太子様々、100名山様々だ。そう言えば、2年前に来た時、某登山塾の塾長さんがやはりお遍路さんを2〜30人引き連れてやって来ていた。あの商売も結構大変なのだろうなぁと、つくづく思ったものだ。
 そのお遍路さんも12時を過ぎるとほとんど消え、ふたたび静かな山がやってきた。「ハンプティーダンプティー」(別名「たまご石」)で遊んだり。あの斜面で何ターン、この斜面で何ターンなどと、滑る事はおそらく無い斜面にシュプールを描き(冬場、ここへ来れる程の体力は、悲しいかな無い)ひねもすネスカフェにて珈琲タイム。そして昼2時を過ぎた頃、板垣夫妻登場と成った。


モルゲンロート

キャンプサイト

霜・ブルーベリー

キャンプサイト遠望

至仏・武尊・富士

ハンプティーダンプティー

じっちゃん登場!

平ケ岳山頂

10月9日
 昨夕よりの風は夜半に雨を伴い、不良夫婦達にとって試練の朝を向かえる事になった。昨夜の「おでん」や「きのこ入りもつ煮」などの話は置いといて、とにかく試練だ。「えびす」やら「八海山」「瑞穂」などの話もとにかく置いといて、試練だ。20kgの荷物を背負って、この風雨の中、あの赤土の急坂を下る…考えただけでも…試練だった。
 下山開始。しかし、天は我々の味方であった。下り始めると雨・風共にすぐ止み、後は先日の冷込みで一段と鮮やかさを増した、黄昏の国の住人達による宵祭りであった…十月は黄昏の国。


撤収

出発

池の岳下(下山開始)

台倉山稜線

下台倉山下(前坂)

到着(鷹ノ巣)

到着(鷹ノ巣)

へぎ蕎麦(薬師)

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